アサーティブトレーニングでロールプレイに取り組んでいただく際に、よく見られる光景の一つが、「相手がウンと言うまで追いつめてしまう」というものです。
一つの例をご紹介しましょう。
Aさんは後輩のB君に、社内で自主的に行われているゴミ拾いのボランティア活動に参加してほしいと思っています。
「ボランティア」ですから、本人が自主的に取り組むことを原則としています。ですので、参加したくない人は参加していません。しかしB君は、「仕事が忙しいから」という理由でこの2年間、一度も参加したことがありません。Aさんは後輩の教育のためにも、地域社会への貢献のためにも、朝のゴミ拾いのボランティアをやってほしいと願っています。
Aさんは、B君と話のやり取りをしながら、自分の率直な気持ちを伝えてみることにしました。しかしながら、Aさんが説得しようとすればするほど、B君の気持ちは引き始め、表情が硬くなって、「絶対に行くもんか」という雰囲気になっています。
B君の態度に業を煮やしたAさんは、「な、な、とにかく来なきゃダメなんだ。わかったな」と言って、B君を無理やり連れて行くことにしました。B君は、結局は押し切られて納得しないまま、しぶしぶ参加です。
相手に「イエス」の答えしか引き出さないとしたら、業務命令と変わりません。相手に「イエス」か「ノー」かを自分で考えて決めてほしいと本当に願うのであれば、こちらのアプローチを変えなければなりません。
ここでAさんには冷静になっていただき、相手の答えをその場で出させないで、一旦引き下がってもらうことにしました。
「・・・という事情だ。とにかく僕はB君に来てほしいと、本当に心から思っている。そのことは知っておいてほしい。君にも真剣に考えてほしいし、今後行こうと思ったら、ぜひそうしてほしい。ま、今日はここまでにしとく。考えておいてくれよ」
そう伝えて、Aさんは席を立ってその場を離れることにしました。B君はAさんのメッセージをちゃんと受け取って、今度は自分で考え始められそうです。
業務命令と違って、アサーティブな主張とは、自分の主張もするけれど相手からも自分の本当の意見が返ってくるような「対話のできる関係」を目指します。そうであれば、相手を追いつめてしまいそうな場面でも、「一旦引く」ということを心がければ、話し合いを継続していくことができるでしょう。