AJ代表日記

AJ代表 森田汐生のつぶやきを記します

なぜNPOなのか

先日、仕事先でお知り合いになった方に、「NPOについて教えてほしい」というご質問をいただきました。

アサーティブネスについて質問されることは多いのですが、私たちの団体がNPO(特定非営利活動法人)であることの意味についてはお話しする機会がありませんでしたので、ちょっとびっくりしたと同時に嬉しくなりました。

私たちがアサーティブジャパンをNPO法人化したのは、2004年の春。それまで、7,8年間は任意団体として仕事をしてきましたが、やはり法人化したほうがいいということで、株式会社でも有限会社でもなく、NPO法人を選びました。

「なぜNPOを選んだのか」
その方の質問は、ずばりこれでした。

私たちの団体は、99%が事業収入で成り立っています。フルタイムのスタッフが8名いて、就業規則も社会保険もあります。ですから、一般の会社となんら変わることはありません。

有限会社ではなくNPOを選んだのには、いくつかの意味がありました。

一番大きかったのは、私たちが「誰に」アサーティブネスを伝えたいのか、ということでした。私たちのお取引先には、自治体、病院、企業、組合等様々な組織があります。同時に、数多くの個人のお客さんもいます。その方々に質の高い研修を提供していくと同時に、本当にアサーティブネスを必要としている人たちに確実に手渡っていくようにしたい。

そのためには、コストや採算に見合わないけれども、私たちにとっての大切な“お客様”がありました。例えば、お金はないけれど本当にアサーティブネスを必要としている人たち。学生だったりシングルマザーであったり、障害を持っている人たちであったり。

そんな人たちにも同じようにアサーティブネスを届けていきたい、という気持ちが強かったことで、最終的にNPOを選んだような気がします。

収益は株主ではなく社会に還元していかなければなりませんので、利潤の還元方法も話し合って決めていかなければなりません。一般の会社であれば簡単で迅速な意思決定も、NPOであれば手間と時間がかかります。

NPOをイギリスではボランタリーセクターとも呼びますが、「ボランティア」とは、“自発的”、“先駆的”、“草の根的”などの意味があります。
だからこそ、面白い。そんな精神を忘れないで、これからも続けていきたいと思います。

日常生活が一番難しい

ご無沙汰しています。6月は本当に忙しい月でした。毎日のように出張にでかけていて、なかなか事務所に寄ることもままならない日々でした。7月を目の前にして、やっと一息ついているところです。

さて、<アサーティブに要求すること>と、<相手の権利を侵害しないこと>との境界線について、私自身迷うことがあります。特に身近な家族との関係となると、ついつい相手の境界線を踏み越えて自分の主張をしてしまい、反省することがよくあります。

病気の人には、「体に良い食べ物を食べてほしい」という希望を持ちます。体によい食べ物を食べる⇒健康、という構図が私の頭の中にあるからです。しかしその構図を絶対のものであると考えると、相手の自己決定権を侵害してしまうことになりかねません。

それを、「アサーティブに」言ってみようとすると、こんな風に整理されます。
事 実:体に良くない食事をしている
感 情:それを見ていると心配になる
要 求:だから、体に良い食べ物を食べてほしい

さて、この要求を伝えた後の「結果」とは何でしょうか。
「私が安心する」、のではないでしょうか。

それでは、これは一体、誰のための要求なのでしょうか。

考えてみれば、それは「自分が安心したいため」であって、相手の立場や気持ちを十分理解したものではない、きわめて自己満足的な要求だということがわかります。

重い病気を患っている人に、「健康で規則正しい生活をせよ」という「正論」を、健康な私がどんなに「アサーティブに」伝えたとしても、それは相手との対等な関係を生み出すどころか、ますます相手の心を閉ざしてしまうことになるでしょう。

正論で相手の口を封じることなく、相手の人生や自己決定権を尊重しながらも、自分の希望はあきらめずに伝えていくこと。アサーティブに自分の要求を伝えるチャンスは日常生活の中の様々な場面に転がっていますが、ふと気を許すと、単なる自己満足のわがままな視点からアサーティブに伝えようとしてしまう自分に気づくこともしばしばです。

何のために、なぜ、アサーティブに伝えたいのか。
言い過ぎてしまったり反省したりしながらも、それでも、一緒に話し合っていくことからしか答えは見えてこないのかもしれません。

日常の中のアサーティブネスが、本当に一番難しいです。だからこそ、実践あるのみなのでしょう。

アサーティブネスは「傷つけない言い方」ではない

いつの間にか、日本社会はとても“傷つきやすい”社会になっているような気がします。

ちょっときつい言い方をしたら、相手が「傷ついた」。
仕事上でダメだと言ったら、「傷ついた」。
自分の気持ちをはっきり相手に伝えたら、「傷ついた」。

アサーティブトレーニングでも、「傷つけないものの言い方を学びたい」、という方が最近増えてきました。

しかしながら、誰かを「傷つけない言い方」というものは存在していませんし、何よりも、アサーティブネスとは「傷つけないものの言い方」ではありません。

どんなに「傷つけまい」としても、結果として傷つけてしまうことは、人と係わる中で山のようにあります。それは、知らなかったために傷つけてしまった、というような伝える側の問題もありますし、その言葉が自分の地雷であったという、受け取る側の問題であることもあります。

コミュニケーションを通して、私たちは「他者」と出会います。「他者と出会う」というのは、自分の枠をはみ出ることであり、枠をはみ出るということは「痛い」ものです。痛いのは当然であって、そこから初めて自分のことも相手のことも、本当に深く理解するプロセスが始まります。

傷つくことを避けて他者と出会うということは土台無理であるはずなのに、どうやら最近は「傷つけること」=「悪いこと」であるかのように理解され、「傷ついた」とさえ言えば相手を黙らすことができるような、そんな妙な使い方になっているように思います。

傷ついたのであれば、それはなぜかの原因に深く向き合うことが最初です。傷つけた相手が悪いと決めつける前に、なぜそのようになったのか、なぜその言葉が自分にとっては「痛い」のか、まずはしっかりと自分自身に問うことが最初のはずです。

その上で、「だからどうしたいのか」、「どのようにすればこの事態を解決することができるのか」ということを真剣に話しあうことが必要です。アサーティブなコミュニケーションが役に立つのは、そこのプロセスなのです。「その言葉には傷つくから、別の言葉にしてほしい」と伝えるのか、あるいは、「そんな言葉に傷つかないように自分の地雷を除去する」という自分自身の問題に向き合うか、方法は様々ですが。

アサーティブネスとは、たとえ傷ついた/傷つけてしまったとしても、お互いの間にある問題に向き合い、葛藤を抱えつつ、人間関係を継続していく力のことです。

どうぞ伝え方のハウツーではなくて、人間関係を築く力として、アサーティブネスを使っていってください。

感情も含めた対話を

ビジネスの場面で気持ちを伝えるのは難しいですね。そんな声をよく耳にします。

確かにビジネス上では、感情的な発言はご法度です。感情ではなく事実を的確に伝え、うまく相手を「説得」することが必要になる場合も多々あります。そこでは、プレゼンテーションの技術とか交渉術が必要になってきます。

ここで、コミュニケーションの「情報」を縦軸に、「感情」を横軸に考えてみましょう。

ビジネスシーンにおいての交渉やプレゼン技術としてのコミュニケーション能力は、<情報軸が高く感情軸が低い>という領域になります。

反対に、<情報軸が低く感情軸が高い>という領域は、「呑みニケーション」、ビジネスでのアフター5の時間です。仕事上では言えない愚痴や文句を酒の席で発散する。あるいは、仕事上では厳しく叱ったとしても、お酒が入ると「実はお前のことは期待しているんだよ」などと本音を話す。

日本の組織は、これまで以上の二つの領域をうまく使い分けていました。仕事上では堅い話をしても、仕事の後では本音の話になるということで、サラリーマンは上手にストレス発散をしてきたわけです。

しかしながら、この、<情報軸が低く感情軸が高い>アフター5の呑みニケーションの領域を、若い世代は避けるようになってきました。アフター5は自分の時間。会社の呑み会につきあって上司の愚痴を聞かされることに「ノー」を言って自分のプライベートに使いたい、あるいは家族と一緒にいたいという若手スタッフの話は、ロールプレイでよく出てくるものです。

終身雇用制が崩壊し人材が流動化するに従って、仕事は仕事、プライベートはプライベートという意識がますます高まってきました。そうなると、仕事中の堅い話だけではなく、仕事中に本音の話をする必要が出てきています。

社内メールが発達し、お互いに顔を見ながら話をすることがぐっと少なくなってきました。しかし客観的な事実確認はメールでコミュニケートすることは可能でも、「自分はどう思っているのか」という本音の意見については、やはりフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが大事なのではないかと私は思うのです。

アサーティブコミュニケーションは、<情報軸も感情軸も高い>領域です。アフター5ではなく、ビフォア5で、本音を含めた話し合いができること。そんな職場の関係を作ることが、結果として風通しのいい組織を作る第一歩になるのではないでしょうか。

ボディランゲージの意味

メラービアンというアメリカの社会心理学者は、コミュニケーションに関する情報は、表情や態度、身振り・手振りなどが55%、声の調子や口調などが38%、そして言葉によって伝わるのはわずか7%だと言っています。

アサーティブにメッセージを伝えるためには、だからこそ、たった7%の言葉の中に、「的をしぼった」具体的なメッセージを入れて、伝えたいことが本当に伝わるように努力しなければなりません。

相手の耳に届くのは、言葉の部分は7%。だとすれば、あなたの伝えたいメッセージは、表情や態度、口調を変えることで、もっとずっと明確に伝わるかもしれないのです。

例えば、会議の席で、「つまらない意見かもしれませんが・・・」、という枕詞をつけて発表される方がいますが、それはやめましょう。「大切なことだと思いますので、よく聞いていただけますか」と真摯にまっすぐ伝えてみると、相手も真剣に聞いてくれます。

自分をおとしめた態度をとると相手は耳を傾けません。反対に、相手に対してけんか腰になって一方的な口調で伝えたとしたら、どんなにまっとうな意見であっても相手は耳をふさいでしまいます。

その意味では、大切なメッセージを「どのように」伝えているのかについては、よくよく自分の言動を振り返ってみる必要があるでしょう。

背筋を伸ばす、相手の顔を見て話す、声のメリハリをつける、落ち着いて語尾まではっきりと伝える(「○○なんですけどぉ・・・」などの言い方はしない)。

実際にロールプレイを使って伝えてみるとよくわかるのですが、ボディランゲージは、表情や態度というテクニックの部分だけではありません。相手を本当に尊重した態度であったり、誠実な口調であったり、相手に対する思いやりの心が言葉の外ににじみ出ている場合に、相手の胸に言葉が届くようなのです。

自分も相手も尊重しようとする姿勢が、コミュニケーションの態度や口調に表れてくる、それこそが、アサーティブなボディランゲージの根本にあるのだとご理解ください。

「何を」伝えるかと同じくらい、「どう」伝えるのかを意識してみること。

自分の態度を変えることで、相手への伝わり方がかわることは、日常生活の小さな場面で実際にやってみるとよくわかると思います。

堂々と胸をはって、背筋を伸ばして、目を合わせて、相手も自分も尊重した地点から話し始めてみる。

そんなところから、アサーティブネスの実践は始められるのです。